
| 濾す | ドアを三枚と布団を濾しているはずなのに、その声はありありと私の耳に届いていた |
| ありあり | |
| にしし | 薄暗い部屋から明るい廊下にでて、私たちは互いに顔を見合わせて、にししと笑う |
| ドギマギ | 彼女の顔は整っているから、顔を近づかれると、同性相手なのにドギマギしてしまう |
| 野武士 | そんな野武士みたいなこと言わないで |
| 援交 | それに援交ならロマのが受けがよさそう |
| 談義 | このまま支倉さんの友だち談義をしてたら空気がお葬式になりそうだったので |
| 便乗 | 私の感想に便乗しながら、カナちゃんはシチューとライスを交互にパクパクしていた |
| やすやす | いくら支倉さんの妹だろうと、やすやすと明け渡すわけにはいかない |
| 明け渡す | |
| 嫌気が差す | そんな自分の浅ましさに嫌気が差すけど他に賢い手段も思い浮かばない |
| 勘繰る | 私の話でもしてるのかと勘繰ってしまうけど、ただの世間話――いや、なにか頼まれ事をされているようだった |
| 端折る | そもそも、いろいろな手続を端折った古町さんが悪いと思うんだけど |
| 鬱屈 | 今まで自分の内側で溜め込んできていた鬱屈としたものを、口にせずにはいられなかったのだろう |
| 日増し | 時間がたてば、楽になるって思ってたんだけど、そんなことなくて、日増しに、どんどん好きになって |
| 凝り固まる | 凝り固まったものを解き放つような熱を口から吐きだしてから彼女は続けた |
| 煩雑 | だってアルバイトや家事に追われていれば、煩雑な事柄を考えずに済むから |
| 咽せる | たぶんなにかを間違えたんだろう。ヘンな所に煙のかたまりが入ってきて、それを吐き戻そうと内臓がひっくり返りそうになるほど咽せる |
| じめじめ | もし仮に支倉さんの性格が暗くて、じめじめしてて、ぬるぬるしてて、なに考えるのかわからないようなひとだったとしても、私が、それを理由につき合いをやめるような人間だと思われてるんだとしたら、ものすごく心外なのよ! |
| 堰きとめる | 先ほどまで目尻で堰きとめられていた涙が決壊し、ぽろぽろと、ほっぺた、あごを伝い落ちてゆく |
| 決壊 | |
| 懊悩 | くだらない青春じみた懊悩なんて、私に似合わないって、そう思っていたから |
| 地団駄 | 朝日奈さんの中で暴れ回った感情は、しかし地団駄では発散しきれないかったらしい |
| ぱりぱり | 今さら前言を撤回するわけにもいかず、包装をぱりぱりと解く |
| ぺちぺち | そう告げながらカナの頭をぺちぺちしてお腹から追い立てる |
| 前掛け | 幸せな顔はけっこうなんだけど、きみ、なんか口元がゆるくなってないかい?なんて、つい妹の口元事情を心配してしまう。前掛けでもさせておけばよかった |
| 菓子折 | ドラマとかでも謝罪のときは菓子折を持っていったりしている印象があったし |
| 相伴 | 悩んでいるあいだに大事なハンバーグを冷ましてしまうのもバカらしいので、私はさっさとご相伴にあずかることにした |
| 詩集 | 普段はきちんと栞を使ってるけど、これは詩集だから適当なページを開いても大丈夫だろう |
| 世論 | 同性愛について、今の世間がどんな認識なのか、世論に疎い私にはわからない |
| 尻すぼみ | だけど語尾は尻すぼみになって空気に溶ける |
| 居住まい | 私はべつに怒られているわけでもないのに自然と居住まいをただしてしまう |
| 五体満足 | きてくれた嬉しさと五体満足だったことへの安心感から、つい大声をあげてしまう |
| 横着 | まあ家にはカナちゃんしかいないし、私も自宅では横着することもあるから、注意することはなかった |
| ごわごわ | 制服にブラってごわごわして気持ち悪いし。邪魔だし。つけてないよ |
| 出会い頭 | 出会い頭にそんな雑談を楽しんでいるところで、ふと我に返る |
| ご法度 | それに映画館でお喋りとかご法度中のご法度だ |
| ぬっと | そんな支倉さんがぬっと顔をあげ、涙目で私のことを仰いでくる |
| とろっと | とろっとした甘い液体が口の中に満ちる。キャラメルよりしつこくなくて、自己主張も控えめだけどしっかり甘くて、なんだかだれかさんみたいな優しさに満ちてる味だなあって思う |
| 断続 | ただ断続的に破裂するようにして自分の想いを吐き出すだけ |
| うつらうつら | 満腹になって眠気が襲ってきたのか、カナちゃんは椅子の上でうつらうつらしている |
| 上擦る | 私は朝から気持ちが上擦ってしまっていて、これではどちらが子どもなのかわからないような有様だった |
| ガバガバ | だけどそのガバガバ推理に図星を突かれてしまった私は、それ以上のガバガバ頭脳に違いなかった |
| しゃらしゃら | クリスマスとか誕生日とかに、幼稚園や小学校で用意するような、あのしゃらしゃらとした壁飾りだ |
| 一悶着 | 支倉さんにしては珍しく、ずいぶんと素直な言葉だった。普段の彼女ならば、ここで『い、いや……朝日奈さんに悪いし』みたいな一悶着を起こすのに |
| 花金 | そんな花金といえども、終電の時間ともなれば客の姿は目減りしてくる |
| 目減り | |
| 突っぷす | カウンターに突っぷして、おちょこに入った日本酒をちびちび舐める女子大生の姿 |
| おちょこ | |
| ちびちび | |
| こんがらがる | 朝日奈さんじゃ、私も朝日奈さんだから、こんがらがる。今は妹のこと、ヒナって呼んで |
| ほろり | ほろりと口からこぼれた言葉に、他ならぬ私自身が混乱する |
| 帰結 | 私が孤立していったのは、当然の帰結だったのだろう |
| 不手際 | とにかく私は自分の不手際のせいで他社同士が険悪になるのだけはイヤだった |
| ヤブヘビ | あーっと、もしかしてヤブヘビ?なーんか、ロマンちゃん、やらかしちゃった? |
| 出不精 | 出不精が祟って不健康なまでに色が白い私からしてみると羨ましくて堪らない |
| 当たり障り | それが選べるようなものなら、きっと、ヒナはロマンを選んでたと思うから。それが一番、当たり障りがないからね |
| 重々しい | それから再び、重々しいため息が重ねられた |
| ぱきぱき | ロマはそのうちのひとつを手にとり、口に放り、ぱきぱきと小気味いい音をたてた |
| 小気味 | |
| 特段 | 十中八九、その件だとはわかっていたから、特段驚きもせず返答する |
| 取り留め | 取り留めも、当たり障りもない昔話だった |
| 遊び呆ける | 私が勉強しているあいだ、カナは公園で遊び呆けていたらしく、私が帰宅すると彼女のすべてがドロだらけになっていた |
| 綯い交ぜ | そうだったのかという想いと、当たり前じゃないかという想いが綯い交ぜになる |
| 大見得を切る | ロマにたいしてあんな大見得を切ったのに、これはさすがに情けない |
| 判然 | あのときというのがいまいち判然としなかったけど、いつだったかそんな恥ずかしい宣言をしたような気がする |
| 滔々 | 今度は私が滔々と語る言葉を、支倉さんは黙って受けとめてくれた |
| 譫言 | それから支倉さんは譫言みたいに、言葉になっていない声をあげていた |
| わらわら | その証拠に、そのあとの休憩時間で、クラスメイトが私の元へわらわらと集まってきていたから |
| ちゃっかり | 四人ってことは、ちゃっかり私も頭数に入れられるのね |
| 頭数 | |
| 追従 | それを追って古町も歩きだして、追従するように支倉さんもそれに続いた |
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